11/4と11/6に今年の賃上げについて書いた。1990年代以降、つまりバブル崩壊以降、日本企業は人件費カット、賃金抑制によって利益の嵩上げを図ってきた。昨年度になり、政府主導の賃上げが図られ、今年度は「物価上昇を超える賃上げを」が喧しい。現実はどうか。
11月段階では人件費について、4-6月までのデータしか得られなかった。12月に入り、7-9月のデータが得られるようになった。そこで11/6で調べたのと同様、今年7-9月の人件費の支払総額と昨年7-9月期の人件費の支払総額とを比較し、どの程度増えたのか計算した。
図表がその結果である。これによれば、製造業と非製造業とも、企業の大小(資本金10億円以上の大企業か、10億円未満の中小企業か)にかかわらず、ほぼ5%程度増えたことがと判明する。
図表をもう一度眺めればわかると思うが、これだけきれいに数値が揃うことは珍しい。政府の強い要請もあり、企業が横を確認しつつ賃上げ率を決めたのだろう。
もう1点、2000年以降としては珍しいことがある。それは、このまま24年度の賃金上昇率がプラスを維持するのなら(多分維持するだろうが)、23年度もまずまずの率で増えているから(ただし製造業・大企業は1.0%と増え方が小さい)、製造業と非製造業とも、企業の大小にかかわらず2年連続して増えることである。政府の音頭もあり、企業としては、増益の手段として賃金抑制を使うことが難しくなってきたのだろう。
ぼちぼち25年度の春闘と賃上げ率が視野に入ってきた。企業としては生産性を向上させ、付加価値生産額(ざっくりと言えば利益と人件費の合計額)を増やさないことには、物価の上昇に配慮しつつ人件費を上げ、かつ利益を増やすことは難しくなる。要注目である。
2024/12/07