川北英隆のブログ

中央銀行の役割とは

先日、元日銀総裁の白川さんに「中央銀行とは何か」を大学生向けに講義してもらった。10年少し前まで日銀の政策を指揮してこられただけに、よく整理された話であり、アレンジした教員としても頷けた。とりわけ、中央銀行ができること、できないことの区別だった。
それは学生からの質問への回答だった。メモしていないので、表現は異なるかもしれないが、以下に記しておく。
経済には長期的な(望ましい)トレンドがある。経済はそのトレンドに沿って動くのだが、短期的にはそのトレンドの上もしくは下にぶれる。中央銀行が本来できることは、そのぶれを修正し、トレンドに戻すことである。
もちろんこの回答は誇張されているし、中央銀行の政策が経済のトレンドに影響を与えることも当然ある。しかし、長期的な経済のトレンドを変えるのは政府の役割である。中央銀行の役割は補助的でしかない。この点を強調されたのだろう。
さらに言えば、中央銀行が前面に立って経済を長期的に変えていこうというのは、本末転倒だとの意味も込められているだろう。多分だが、先進国として例を見ない株式の買い入れと、異常に多額の国債を抱えた現在の日銀の資産構成に対する疑問の提示でもある。

2024/12/11


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