旧聞ながら、12/14の日経新聞「インデックス投資家革命・下」に、僕へのインタビュー内容が引用された。「業績不振で資本効率を改善する気がないような企業でも指数の対象なら資金が向かう」と。
株価指数(株式インデックス)を模倣する投資信託の特集だった。インデックスを、何の疑いや批判もなく模倣するから、パッシブ運用と呼ばれる。このパッシブ運用型の投資信託が、今や大人気である。というのも、この投資信託の手数料は安い。
実はだが、僕もアメリカ株のパッシブ運用型投資信託を保有している。もう少し書けば、S&P500というアメリカ市場を代表する株価指数を模倣する上場投資信託(ETF)を持っている。この事実は確か『個別株の教科書』に書いたと思う。
一方で東証株価指数(TOPIX)のパッシブ運用には批判的なスタンスをとってきた。実際、その手のETFも多数あるのだが、少しだけ見てみようという気にさえならない。
何故なのか。別にアメリカが好きで、日本が嫌いなわけではない。同じインデックスであっても、そのコンセプトに大差があると考えているからである。
TOPIXには競争原理が働かない。これまで、東証一部市場に上場されたのなら自動的にTOPIXを構成するとされた。しかも、余程のことがないかぎり東証一部市場から外されることはないから、TOPIXに悠々と居残れる。
日本の大学と一緒である。入学さえすれば、勉強をしてもしなくても、余程のことをしでかさないかぎり卒業できる。結果として日本の大学のレベルは高くない。そんな説明をすると学生がにやっと笑うから、身に覚えがあるのか、周囲にそういうのが多いのだろう。
要するにTOPIXは玉石混交である。2023年3月、東証が上場企業に忠告し、発破をかけた。加えて、多少だが、TOPIXに競争原理を導入しようとしている。最近の株価の上昇にある程度寄与していると思えるが、いつまで続くのだろうか
一方のS&P500はコンセプトが異なる。アメリカの上場企業のうち、時価総額の上位500社を原則として選び、その500社の株価によってS&P500という株価指数が計算されている。しかもアメリカの投資家は「上がりそう」と思う企業の株式を買い、そうでない企業を容赦なく売るから、時価総額上位500社に入るためには必死の経営努力と投資家への業績アピールが求められる。毀誉褒貶があるものの、資本主義の権化的市場である。
そんなアメリカ市場だから、株価指数を模倣する投資信託のパフォーマンスは高い。個人がいくら「上がりそうな企業」を選んで投資しても、S&P500に勝つことは至難に近い。これに対してTOPIXに勝つのは比較的簡単である。「投資したくない企業さえ外せば勝てる」との極論もある。
日経新聞に引用されたインタビー内容は、実はTOPIXのことである。そんなパッシブ運用の投資信託には、いくら手数料が安いからといって投資すべきでない。短期的には負けるかもしれないが、日本を支えそうな企業を選び投資するのが王道であり、いずれ勝てることはほぼ間違いない。
2024/12/24