株式投資において、値下がりは付き物である。では値下がりした時にどうするのか。少しの値下がりであれば「そんなこともあるやん」で終わるが、相当下がると「どうしようか」となる。そんな時、プロと称する投資家は損切りルールを決めておけと言う。本当なのか。
ここでの損切りルールとは、「たとえば株価が1割とか2割とか下がると、機械的に売ること」を意味する。では、損切りルールに基づいて売る意図とは何か。
損切りルールを定めている多くの投資家には会計年度がある。期末に損失(実現損ではなく、値下がりという含み損)が重荷になりかねないから、あまり重くならないうちに売ってしまおうとの意図がある。
投資信託などの場合、その基準価格に大きく影響するような特定の企業の大きな値下がりは、同様の運用をしている他の投資信託との競争上、(多くの場合は社内で)問題が生じかねない。そこで、問題になる前に売っておこうとの意図もある。
この2つの場合、値下がりした企業の業績を直接に問うわけでない。外からの見え方を問題にしている。
損切りルールの場合、それを設定しいる投資家の類型として、短期売買という特徴も多くの場合に見られる。「明日にでも上がる」と判断して投資したのに、逆に下がったものだから、「間違えた」と売るのである。こちらも値下がりした企業の業績を問うてはいない。その企業を売って別の企業に乗り換えれば、新たに勝負できるとの発想がある。
まとめれば、一般の損切りとは、明日か年度内かはともかく、値下がりした株式を持っていると次のチャンスを逃すか、ろくな見方しかされないとの発想である。いずれにしても投資先企業の業績を見限るわけでない。
別の角度から見れば、長期投資の発想ではない。長期投資の場合、株価が下がったとしても、それが景気の思いがけない変動を受けたものであれば、売る必然性はない。
値下がりして損切りすべき状態とは、投資した企業の経営が、当初想定していた状態よりもかなり悪い方向に向かっている場合である。もしくは、景気全体が当初の想定よりも悪くなり、株式そのものへの投資が望ましくないと判断できる場合である。
長期投資に向いた企業はそんなに多くない。ましてや個人投資家の場合はそうだろう。だから、長期投資にと考えて買った株式が思いがけず値下がりした場合、下がった理由を考えるべきである。
最初に、株式市場全体と比較して、より大きく下がっているのかどうか。
この時、より大きく下がっていなければ、株式そのものを投資対象としていいのかどうかを考える。経済全体に問題がなければ、もしくは経済が近々回復すると判断するのなら、むしろ「買いチャンスの到来」である。
逆に、買った企業が市場全体よりも明らかに大きく下げているのなら、買った企業の経営に何か見落としていた問題があるのかないのか。問題が見当たらないか、問題があったとしても軽微と考えられるのであれば、損切る必要はない。問題が生じていて、見過ごせないと思った場合のみ、損切ればいい。
いずれにしても、投資方針をしっかりと定め、株価動向を冷静に判断することが重要となる。損切りルールに意味があるのは、短期投資の場合か、長期投資であっても判断するのが面倒か困難な場合である。後者の場合、株式への投資は、そもそも程々に思うが。
2025/01/12