川北英隆のブログ

巨大災害に備えているか

昨日(1/12)の日経新聞の2面、インタビュー記事「南海トラフと戦えるのか」は興味深かった。能登半島地震の初期対応がお粗末だった(意訳)と、政府の初動を評していた。
インタビューの相手は伊藤哲朗氏、元内閣危機管理監であり、東日本大震災時に復興の指揮を執ったらしい。その原点は阪神大震災時に警察庁交通規制課長としての対応だとか。
インタビューでの主張は、1つは大災害が生じれば、総理大臣と、その直下の組織である内閣府が先頭に立ち、対応すること。2つは大災害時の対応を確実に記録しておくことだという。現在議論されている防災庁計画は空論だとも主張している。
もっとも、伊藤氏の経験は災害時の対応であり、今回の主張はそれに基づくから、主張の範囲が限定されている。実のところ、災害の予防という観点からの提案がもっとあると期待して記事を読んだのだが、この期待はあまり満たされなかった。
記事の中に「事態を想像し、結果を見通して対策を打つのが危機管理の要」という発言がある。この発言は、記事では大災害が発生した直後の対策のことなのだが、同じことは大災害が発生する前、すなわち予防や事前対策にも言えるのではないか。
記事では南海トラフ地震が発生した場合にも少し言及がある。「事態を想像し、結果を見通して対策を打つのが危機管理の要」であるのなら、それは南海トラフ地震などの大災害が発生する前にも言える。
1つは、国主導で事前の予防策をできる限り講じることである。大震災で津波の心配があるのなら、住居を安全な場所や地域に移転させておくべきである。道路などのインフラの破壊が最小限に収まるように備えるべきである。これは半島部だけではなく、首都圏のゼロメートル地域にも言える。
さらには、予想される大災害は南海トラフ地震などの地震だけではない。異常気象が常態化する中では、洪水や土砂崩れという災害もある。火山活動もある。
2つに、大災害対策には予算が必要という事実を、国がしっかりと認識しなければならない。もしも財政に余裕があれば、災害が発生した時点で対応すれば済むかもしれないが、現在の日本の財政に余裕はない。それどころか、国債という債務が膨大に積み上がり、金利のある世界に入れば、債務に対する利払いだけで首が回らなくなりかねない。
インタビューには「災害発生時には『いまの段階での優先順位は何か』が重要になる」との発言もある。南海トラフ地震などの大災害時には多額の財政支出が必須でる。その支出に備えるため、現在のように税収が当初予算を大きく上回れば、その余裕金をばらまくのではなく、財政の健全化に使う、つまり国債を積極的に償還するが最優先だろう。
昨今の政府は人気取りのために、自分達の居心地を良くするために支出を膨らまそうとしている。小金が入れば一夜の飲み食いに一銭残らず使い果たしてしまうだけ、家計を顧みようとしない「くそオヤジ」みたいなものか。そんな振る舞いを繰り返していると、やがて「最後のひとふり」が来て、大災害に対応しようにも「無い袖は振れない」となる。
ええっと、「くそオヤジ最後のひとふり」とはラーメンのチェーン店でした。

2025/01/13


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