大発会以降の株価の頭が重い。チャートで確認すると、頭が重いのは昨年夏以降なので、新年が悪いわけではない。では今年の相場はどうなる、どうする。
新年はヘビ歳、その大発会の挨拶で日本取引所(東京証券取引所の親分)の山道(やまじ)社長は、日経新聞(1/6の夕刊)によると、「(昨年と比べ今年は)一皮むけて成長した市場に」と抱負というか期待を表明したらしい。その記事には、眼が5つあるミャクミャクも写っていた。
この「一皮むけて」には、なかなか含意がありそうだ。それを使った山道氏は、単純にヘビの脱皮をイメージして発言しただけだろうが。
そもそも蛇は金運と関係づけられ、縁起が良いとされる生き物だ。脱皮して成長していくからだろう。
とはいえ一方で、不気味で恐ろしい生き物ともされる。ヤマタノオロチ(八岐の大蛇)がその象徴だろう。頭を8つ持ち、傲慢に振る舞っていたため、退治された。日経夕刊に写っていたミャクミャクに頭がいくつあるのかは不明ながら(赤い出っ張りを数えたら11個あった)、ヘビ歳に怪物的なミャクミャクが登場とは、ヤマタノオロチを彷彿とさせる。
もう一点、「一皮むける」とは、あまり美しい表現ではない。「一皮むけたいい男」とは使うが、「一皮むけたいい女」とはあまり使わないだろう。女に使うとしても「お水」を連想させる。
「皮がむける」とは、僕にとって日焼けした後のイメージが強い。皮がむけた男は「ひょっとしてだが、格好良い」かもしれないが、皮がむけた女はありえないし、ましてやそれが若いのなら、二目と見られないに近い。シミも残る。だから日焼け止めクリームが売れる。
株式に話を戻す。日本の株価は昨年になり、ようやく1989年の高値を抜いた。だから今年は、さらに上値を目指すため、一皮むけたいのだろう。しかし日本の上場企業にとって、一皮むけるのは最低限の条件である。「34年かけて最高値」とは、自慢の弁には程遠く、むしろ反省の弁である。
さらに上を目指すには脱皮の後の変身が求められている。幼虫から蛹へ、蝶へと生まれ変わる必要性の高い、どうしようもない企業(言い過ぎかな)、魅力薄の企業が多すぎる。変身してモルフォ蝶になることが世界から求められている。
言い換えると、一皮むけて大きくなるだけでは不足である。脱皮して捨てるものは捨て、得るもの(たとえば羽)は得るという経営が求められている。
頻発するM&Aがその脱皮への要請を代弁している。時価総額が10兆円の企業といえども、それを丸呑みできるだけの資金力を持った企業や組織が世界には多く蠢く。日本という、いまや小蛇がちょっと大きくなったくらいでは、世界のオロチに「うめー」と飲み込まれ、舌なめずりされるのが落ちである。
2025/01/13