暴騰とは、株式の話ではない。消費者物価である。2%値上がりして目出度いとか、もう少し値上がりしないと目出度くないとか、神学論争的な発言が報じられる。庶民としてはそんな議論よりも、「コメや野菜を何とかしろや」だろう。そこで何が暴騰したのか調べてみた。
データは比較的簡単に手に入る。総務省統計局の「消費者物価指数」のページに入ればいい。「時系列データ」というのがあるので、それをクリックすれば、類別や品目別の価格(ただし2020年を100として数値)の推移が得られる。
その数値をダウンロードして、24年11月までの値上がり率を計算してみた。品目別の推移はデータ数が多すぎる。まずは類別にまとめた数値があるので、それで当たりをつけるのがよさそうだ。
1年前(昨年11月)と比べると、消費者物価全体で2.9%の上昇である。内訳では、農水畜産物が10.7%、米類が63.6%上昇している。
おおよそ5年前、20年1月と比べると、年率で見て、消費者物価全体で1.9%、農水畜産物が5.3%、米類が10.5%上昇している。つまりコメはこの5年間、毎年5%の率で上昇してきたことになる。
個別の品で見ると、5年前との比較ではキャベツがトップである。電球・ランプ、コーヒー豆、パック旅行費が上位に並ぶ。キャベツが特殊かといえばそうではなく、米類、野菜ジュース、りんご、きゅうり、ピーマンなども並ぶから、必ずしも特殊ではない。
10年前との比較ではどうか。
やはりキャベツがトップだが、次に来るのは、いか、さんま、はくさい、だいこんなとである。米類も上位にある。ちなみに、この10年間、米類は年率、つまり毎年6.2%ずつ、生鮮果物も6.2%ずつ値上がりしていたと計算できる。いかは10.2%、だいこんは7.4%である。消費者物価全体は1.2%にすぎないのだが。
それではもっと長く、35年前(1989年11月、日本のバブルの頂点の頃)と比較すればどうか。
トップはほうれん草である。年率に換算すると3.9%上昇してきた。キャベツ3.6%、灯油3.3%、はくさい3.2%、いか3.0%と続く。野菜、果物、魚介類のオンパレードである。
へえーっと思ったのは葉書である。昨年の値上げで一気に上位に入った。年賀状離れが急速に進むわけだ。
政府が抑制しているガソリンなんて年率1.0%と(抑制しなければ1.2%程度のようだが)、35年間という年月の中では大したことはない。なお、以上の値上がり率との比較のために計算すると、消費者物価は年率0.7%の上昇だった。
ということで、消費者物価全体を見た議論も必要だろうが、それよりは生活に直結する食料品の値段も考えてほしい。「うまくて健康的な食べ物を何とかしろや」だ。
2025/01/15