セブン&アイがアメリカでのコンビニ事業を切り離して上場させる一方、日本の7-11はカナダの同業他社(ACT社)の買収提案を横睨みしつつ、単独経営を目指すらしい。
日本のコンビニというか小売業界は飽和状態にある。人口減少の中、ますます競争が激化するだろう。そんなコンビニの希望の星は海外展開である。
7-11にとってアメリカは成長の見込める市場である。そのアメリカ7-11を切り離すというのは、上場後もその経営の主導権を確保する計画とはいえ、成長市場から一歩退くことでしかない。
うがった見方をするのなら、カナダ社の目をアメリカ7-11だけに向けさせるオトリ作戦かもしれない。どちらが主導権を握るのかはともかく、「アメリカ市場を2社で開拓すればどうか」との提案を暗に示したとも見える。
両者が一緒になった場合、アメリカでのコンビニ店舗シェアは、7-11が8.5%、カナダ社が3.8%、足し合わせると12.3%である。地域によってはもっと比率が高く、アメリカの規独禁法に引っかかる。両社が店舗売却について協議しているらしいのは、アメリカ市場での買収もしくは協業の可能性を見越したものだろう。
一方のセブン&アイは、アメリカ7-11の上場による資金や現在進めているスーパーなどの売却資金を使い、大規模な自己株式取得を行うと発表した。要するに「事業を縮小し、新たな事業展開は小規模に」との宣言である。
日本の小売業の雄だった(って差別用語?)イトーヨーカ堂が、ついに7-11にも力を注がないとは。その背景には創業家を鎮座させ続けたいとの意図がある。一言で表現するのなら、セブン&アイは成熟期を通り越し、一気に衰退の影を帯び始めたようだ。
7-11を実質創業した鈴木敏文氏を追い払ったときからの懸念が、今や現実化している。店舗にすっきり感がなくなり、電子マネーでつまづき、店員の質が落ち、挨拶がなくなった。
さらにカミさんが言うには、「レジで打ち出された値段が、商品の下に表示されていた値段よりも高かった」「文句を言うと、値上げになったのでしょうとレジ係が答えた」とか。「アホかいな」である。店員が商品の値段の変更を忘れただけだろう。それなのに「責任は本部」と言わんばかりの対応は、責任逃れが十八番の役所の写しである。
こんなことが続くと、7-11は普通の企業どころか、普通未満に落ちていく。「経営者の質が企業の質に影響する」という、見たくもない好例が生まれつつあるのかもしれない。
2025/03/08